物流業界のパイオニア、センコーグループホールディングス株式会社様。
100年以上続く老舗ならではの課題とデジタルを活用した更なる成長についてのご相談を頂戴した当社が、センコーグループホールディングス様の想いを実現する最適な方法として、弊社の関連会社ディジタルグロースアカデミアと協働で「デジタル人材育成」を提供しました。センコーグループホールディングス本社、およびグループ会社の九州センコーロジ株式会社のみなさまにて実施したワークショップの成果、今後のグループ全体での展望について、お話を伺いました。
南里氏
弊社は物流事業を軸に、人の生活を支援するため様々な事業を展開しています。2016年、センコーグループ創業100周年の節目には、社内大学「センコーユニバーシティ」を創設し、人を育てることにも注力してきました。組織として、次の100年に向けた新たな価値を創出できる人材を育てることを目的としての活動です。
教育方針については、既存事業の強化を図る「右手」としてのオペレーションスキルの教育だけでなく、イノベーションを生み出す「左手」として新規事業の探索と育成にも力を注いできました。これは、スタンフォード大学大学院教授のチャールズ・オライリー氏と、ハーバードビジネススクール教授のマイケル・タッシュマン氏が提唱する“両利きの経営”にも通じる思想です。
弊社は物流業界にありながら、IT管理や物流コンサルティングなどの新たなチャレンジも続けてきました。日々変化していくこの現代のなかで、リスクを取ってもチャレンジすることが新しい価値を創造することに繋がると考え、最先端のスキルとナレッジを持つ人材の育成を大切にしています。
南里氏
人に投資することが成長の鍵だと考え、「左手」としての新たな価値の探索を実施していた頃、ビックデータというワードが世間で話題になり始めました。その頃からデジタルの領域については本業ではないため、参入していくにはチェンジさんや、ディジタルグロースアカデミアさんのようなプロの知見を得る必要性を感じていたというのが、ワークショップ実施の背景にあります。
ただ、決定的な出来事としては、新型コロナウイルスの拡大です。危機感は持っていましたが、社会のデジタル化が進み、本格的に「やらなければならない」事態となりました。とはいえ、2016年から準備していたものの、実際にどこから手をつけてよいのかわからない状況でした。ただ、社内メンバーのみで考えると、どうしても現在の改善にとらわれてしまう。そこでいよいよ客観的にプロの知見を得ようと決めました。
南里氏
研修自体が単なる座学で終わらず、学んだことを少しでも実践する機会があることを私たちは重視していました。御社でお願いすると決めた理由は、チェンジさん、ディジタルグロースアカデミアさんのご提案が双方向型のワークショップでしたので、目指していた「学びが即座に現場で活きる」という状態を実現できると感じたためです。
そもそも、本研修実施の狙いは、「学びの定着化」とその後の「事業貢献」であり、How(どのように解決させるか)にフォーカスを当てたプログラムであるかということ。
過去、デジタルトランスフォーメーションの波に乗り、外部パートナーさんに入っていただいたトレーニングでは、マインドの醸成を意識した研修で、デジタルに対しての恐怖心を取り除くことができました。私たちが目指す姿を実現するためには、次のステップとして、受講生が得た知識を現場で活用し、行動変容に至り成果を生みだす状態へと持っていく必要があります。今回は研修プログラムの期間の中で、小さなアクションであったとしても実践することを重視し、それらを組み込んでいる御社の研修プログラムを選択いたしました。
一色氏
プログラムは、3カ月の期間において4日間のワークショップを4回実施。各回前半は学びを得て、後半の1、2日でそれを実践に繋いでいくという内容でお願いしました。すぐに現場で活かせるように、アウトプットができるディスカッション型という点もこだわりでした。
e-learningでベーシックなスキルを身に着け、どのようなHowがあるのかを学び、その上で課題に対するHowを融合させる設計にしていただきました。実際に受講している姿を見て、私たちにはこういった教育アプローチも必要であったと感じましたね。ツールの使い方だけでなく、課題に適したツールにたどり着く調べ方や、活用方法について理解を深められていました。さらにはそれをワークショップで実践的に使ってみて身に着ける。全体を通して、とても有意義なプログラムであったと思います。
工夫した点としては、受講生に研修で得た学びのシェアをお願いしたことでしょうか。これは、自身で学んだことをフィードバックすることで知識の定着化を図るとともに、学びのお裾分けによる職場の交流と知見の蓄積が目的です。職場の繋がりを強く意識した仕組みとして取り入れました。
私たちの目指す姿は、学びっぱなしで終わらず、学びを得て、すぐに現場で実践し成果を出せる状態です。今まで、そこに至るまでに苦労を重ねてきました。今回のプログラムでは、チェンジさんやディジタルグロースアカデミアさんが、ワークショップから現場実践までを地続きに設計してくださり、組織の雰囲気を変えるところまで気を配ってくださったので、実際に形になったと感じています。
石井氏
私は九州センコーロジで、工場内倉庫の在庫管理業務を担当しています。プログラムは、研修、e-learning、現場実践の3つから構成され、3カ月かけて学びを活かすというものでした。研修では、自身の業務課題を発見しつつ深堀り、e-learningでは、デジタルリテラシーを身に着け、デジタルを使った課題解決の手段を学び、実際の現場では、学んだことを使って課題解決をはかるといった具合です。
最初はDXと聞いてすごく難しいイメージもありましたが、実際に受講してみると、すぐに業務に活かせるような具体的な使い方をご紹介いただくことが多かったです。研修を受けることで、現場の人たちがきちんとビジネスを理解し、課題感も言語化でき、ツールを使った実践方法も身に着けることができれば、個人としての活躍が期待でき、組織としても最強の状態を実現できると感じました。
石井氏
今まで、お客様からいただく紙の機械稼働予定チャートを、Excelに手入力して管理していました。この業務は作業量も多く、属人化しており、ここに時間がとられてしまうことが大きな課題でした。そこで、今回の研修で得た学びと同僚からのアドバイスもあり、私自身もこれまで最も困っていたこの業務を効率化させるため、自動化ツールの作成に挑みました。
実際、自動化ツールによって、毎日60分ほど作業時間を削減することができました。これは1年で換算すると、30営業日分にも相当します。ただ、これは単なる時間の削減だけでなく、作業の標準化や属人化解消にも繋がり、誰でも対応可能な体制を整える結果にもなりました。
田原氏
今回石井さんが作った仕組みは、他拠点にも展開でき、すでに2拠点で活用しています。この取り組みで、“デジタル化は業務改善にとどまらず、業務の流れが画一化され生産性を上げられる“という、みんなの気付きに繋がったと思います。狙いとしては予想していましたが、こんなにも現場の意識を変えるきっかけになるなんて、想像以上でした。
また、特に素晴らしい点は、石井さんが自ら考えて作り上げたものに対し、周囲のみんなが自然とサポートし始め、デジタルに対して前向きな気持ちを持ち始めたことです。
石井さんが知識をみんなに共有してくれたことで、「DXって難しくてよく分からない」と言っていたメンバーも、興味を持ち始め、デジタルに対して前向きな発言もみられるようになりました。なかでも、担当者が不在でも他のメンバーで業務を回せるようになったことが大きなインパクトだったのだと思います。以前は担当者がお休みだと、「業務が遅れたらどうしよう」という空気が流れていましたが、今はこのツールのおかげでそんな不安は解消されているようです。振り返ると、それって結構ストレスだったと思うんですよね。そう考えると、業務改善化が職場の雰囲気まで変えてくれて、一石二鳥ならぬ一石五鳥くらいの成果を実感しています。
石井氏
職場の雰囲気というお話ですと、実は受講時、「静かな環境でイヤホンなどを付けて受講するように」との連絡もありましたが、スピーカーを大音量にして事務所内で受講していました。情報をシェアするのではなく、正確な情報をみなさんに聴いてもらえたらと思いまして。すると、自然と周りのみなさんも耳を傾けるようになって、「こんなことができるの?」「ちょっとこんな風にやってみようか。」と楽しげな話もで始めたのです。それを見ていた田原さんが、「気になるから聴きながら作業しよう」と、許してくれたので、ラジオ放送のようなスタイルは継続されました。みなさんが自然とDXに馴染めた要素として、いつも前向きでアットホームな環境を作ってくれる田原さんの存在も大きいと思います。
一色氏
あえて、スピーカーで音量を流していらしたとは驚きました。石井さんが自然と「学びのハブ」になってくださっていたのは、とても嬉しいですね。研修設計の中でも「どうすれば学びを職場へ還元できるか」という点を特に重視していましたので。
藤井氏
ご質問にお答えする前に、物流業界について少しお話させてください。今、業界全体は大きな転換点にいます。人手不足や働き方改革、運用の抑制、お客様からの品質要求──往来の方法では太刀打ちできず、IT、DXは避けて通れないと今どこの企業様もかなり力を入れられています。ただ、あまり考えてこなかった領域でもあり、業界全体での問題として、リテラシーが乏しくなかなか対応しきれないというのがあげられるでしょう。ゆえに私たちは経営課題として、現場と経営が一丸となり、正面からDX化に取り組んでいます。
そのため私自身組織のトップとして、社内で繰り返し「失敗してもいいから挑戦しよう」と発信してきました。その結果、よい兆しが見えたときには、できるだけ早く現場に向かい、担当者から直接話を聞いて「ちゃんと見ているよ」「応援しているよ」と言葉を伝えるようにしています。今回の石井さんの取り組みについても、報告を受けるだけでなく、プロジェクトの早期から現地に足を運んで確認していました。「現場がやってくれていることに、経営陣が反応する」という姿勢を示すことが、現場のモチベーションを高める秘訣だと考えているからです。
ご質問の回答としては、成果を拡大させるために、みなで取り組みたいと考えています。DX化を進めるには、一人ひとりがDXに触れる機会が一番大事なことなのではないでしょうか。今回、石井さんの成果によって、従業員のみなさんのDXに対するハードルが下がり、興味が高まったと思います。これを機に少しずつみなさんのスキルアップを図り、成果を感じていただきたいですね。そのために会社としては、教育の機会を増やすことや、企画を推進できる場を創出することが重要であると認識しています。
加えて、働き方の環境もより改善していきたいですね。実際に、DX化に取り組みはじめてから、残業時間は確実に減っています。研修プログラムによってメンバーが生成したツールを活用した結果、精神的にも肉体的にも良い状態が生まれているのは間違いありませんので、これは継続していきたいです。
南里氏
なんといっても、シンプルに成果が出たので、お願いして良かったです。弊社のレベルに合わせたハードルを設けた研修を実施してくださったおかげで、受講者のフォローやマインドを高められたことが結果に結びついたのだと思います。
また、私たちの気付きとしては、Howまでのたどり着き方を教わったことですね。受動的なスキル研修ではなく、Howの重要性を確認しつつも、Howそのものを教えるのではなく、背中を押してくれるような講義で「考え方・調べ方」を教えてもらえたことが、とても有難く思います。これにより、すぐに現場での実践に繋げられました。
プログラムそのものも丁寧な設計でしたし、講師も寄り添ってくださいました。専門的な内容でありながらも、フレンドリーで、受講者も楽しんで受講していたのが印象的でした。“やってみる”という気持ちを引き出してくださり嬉しい限りです。
石井氏
実際に学んだツールがそのまま業務改善に直結するというのを目の当たりにし、「自分にも現場を変える力がある」と実感できました。自動化を進めることで日々の業務が本当に改善され、改善によって空いた時間を別の業務に充てることができるということを学べたのは、私にとって大変嬉しい出来事でした。
これからは、もっと職場のみなさんに学んだことをお伝えできたらと考えます。機会をいただけるのでしたら、ミニ講座としてツールの活用法や業務改善の方法を社内のみなさんに紹介していきたいです。
一色氏
短い期間の中でも、“実践”まで見えていたというのは企画として良かったところです。今回の研修では“実践”および“周囲の変化を生み出す”ことを目的としていたので、まさに石井さんのような「伝える人材」が現場に生まれることこそ、私たちが一番目指していた姿でした。DXは単なるツール導入ではなく、人も変革されていく必要があります。チェンジさんやディジタルグロースアカデミアさんは、そうした我々の意図を深く理解し、受講生一人ひとりの状況に合わせて、動き出しやすいよう柔軟にサポートしてくださいました。ツールに対してHowや使うタイミングの部分まで教えてくださったことも、この研修の良かったところであり、最終的にはそれが成果に結びついたのだと思っています。
藤井氏
私たちは個に向き合うことを大事にしています。そんな私たちと同様に、チェンジさん、ディジタルグロースアカデミアさんも受講生一人ひとりに向き合ってくださいました。また、プログラム設計も弊社の要望をしっかりと聞いてニーズに合ったものにしていただけたおかげで、受講生の満足度や研修の効果が高まったのだと感じています。研修をお願いして本当に良かったです。
今回の取り組みを通じて、会社全体でDXへの関心が一層高まったことは非常に良い傾向です。今後も従業員同士でお互いを高めあえる環境を提供し、成長を続けていたいと考えます。チェンジさん、ディジタルグロースアカデミアさんとセンコーユニバーシティ事務局の熱意あるご支援が、受講者の背中を押し、行動変容による成果を実現させたと感じています。