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「人的資本開示とは」?注目されている理由を解説!

なぜ人的資本の開示が求められるのか?

企業の価値を測る際に、みなさんはどのような指標を思い浮かべるでしょうか?

様々な評価基準がある中で、近年注目されている指標の一つが「人的資本」です。企業に対して開示を求められるようになりました。

そこで本稿では、人的資本の概要に加え、人的資本が注目を浴びる理由やそれを開示するメリットなどをご紹介します。

1.人的資本とは何か

人的資本とは、人が持つ知識・スキル・素質といった要素を、価値を創出する源泉となる「資本」と捉えることです。以下で、もう少しく詳しく人的資本についてご紹介します。

人的資本と人的資源の違い

人的資本の理解を深める上で、人的資源との比較は非常に有効です。以下の表をご確認ください。

■人的資本と人的資源の比較

人的資本人材を“価値創造の源泉と捉え、支払う費用を投資”と捉える。人材は教育により能力を伸ばすことで価値を高められる対象と考える。
人的資源人材を“収益を生み出すために支払うコスト”と捉える。限られたものをいかに効率的に運用するかに焦点があてられる。

上記のように、人的資源は人材を消費の対象と捉えますが、人的資本は人材を投資の対象と捉え、その価値は教育により向上させるものと位置付けています。

有形資産と無形資産の関係

企業の価値を計測する手段の1つに、資産価値があります。この資産は、有形資産(モノやカネなど)と無形資産(知的財産などの知識やスキル)に分かれ、人的資本は無形資産にカテゴライズされます

アメリカのオーシャン・トモ社の調査によると、アメリカでは企業価値に占める無形資産の割合が、1975年の17%から2015年には84%2020年には90%に推移しています。このように、企業価値における無形資産の重要性、とりわけ人的資本の重要性は近年急激な高まりをみせているのです

2.人的資本が注目される背景

(1)モノ社会からコト社会への変化

コト社会と呼ばれる現代は、市場の興味が“モノ”の消費・所有から、“コト”の消費=経験(体験)に推移しました。コト社会では、個々によって価値のある“経験”が異なることから、ニーズが細分化・多様化し、変化が激しいことが特徴です。

よって、モノ社会のように、モノの単一的な性能や品質などの商品力(製品力)が価値の源泉ではなく、市場のニーズを満たす社員の「アイデア」や「変化に柔軟に対応できる能力」が価値提供の源泉となるために、より人的資本への注目が高まっています。

(2)労働人口の減少

日本における労働人口は減少の一途を辿っています。高齢者や女性の雇用を促進したことで一定の歯止めがかけられていましたが、近年では労働人口の減少が顕在化しています。労働人口が減少することで、人材の獲得競争は激化して、特に優秀な人材を獲得することは困難を極めています。

そこで最近注目を集めているのが人材育成です。教育により既存の社員をより優秀な人材へ育成することに力を注ぐ企業が多く、この社員教育への取り組みが企業力を測る重要な指標になっています。

このように、労働人口の減少に伴う人材育成の強化が背景となり、育成目標・計画・成果などの人的資本に対する取り組みが注目されています。

3.人的資本の開示が必要な理由

これまで人的資本の概要や注目が集まる背景をご紹介しました。本章ではその人的資本の開示が必要な理由について、具体例を2点挙げてご紹介します。

高まるESG投資のニーズ

ESG投資への関心は近年大きな高まりを見せています。ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」のことで、企業が長期的に継続して成長していくためには、ESGに取り組む必要があるという考えの下で注目を浴びている項目です。

”Social”に該当する人的資本に関する情報は、「労働慣行」「健康・安全」「多様性」「教育」などの項目を対象にしています。

Harvard Law Schoolの論文*では、企業による従業員のトレーニングによって、最終的に売上高や利益の向上につながる可能性が高い、と結論づけています。またPwCの調査**では、「社員1人当たり育成時間」と「女性管理職比率」の増減がPBRの増減と相関性が強いことが確認されています。

上記のように、ESGの中でもSocialに該当する人的資本と企業の業績に関連性が認められていることも、ESG投資のニーズの高まりの一因です。このような投資ニーズの高まりから企業は人的資本の開示を求められています。

*Aaron Bernstein, Larry Beeferman, “The Materiality of Human Capital to Corporate Financial Performance”, Apr. 2015.

**参考 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/human-capital.html

情報開示を促す動き

欧米では企業に人的資本の情報開示を促す動きが以前から活発化しています。日本においては、有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4000社を対象に、2023年3月期決算以降の有報に人材投資額社員満足度といった情報の記載を求めることが決まりました。

具体的には、「人材育成方針」と「社内環境整備方針」の策定を軸に、人的資本において描く戦略や目標、指標などの明記が求められます。目標については、従業員の満足度や定着率・離職率、人材への投資額などが対象です。

また、一定規模以上の企業に対しては、多様性の測定指標として、「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金格差」の3つの指標の開示が求められます。

4. 人的資本の開示によって得られるメリット

人的資本の情報を開示することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

人的資本への取り組みを実施していたが、これまで開示していなかった企業にとっては、その開示により企業評価の見直しが入ることは大きなメリットです。また、人的資本の開示によって自社の問題点が顕在化されて、それを改善する機会が得られることもメリットといえるでしょう。これらを含め、人的資本の開示によるメリットをいくつかご紹介します。

投資の拡大

人的資本を企業評価において重要視する傾向が日本で強まっていることをご紹介しましたが、欧米では以前から日本に増して重視されています。よって、人的資本を開示することで、海外を含めて投資を受けられる対象が広がる可能性がメリットとして挙げられます。

企業価値の向上

人的資本の開示を通じて自社の問題点が可視化されることで、人的資本への意識が強くはたらくと同時に、その内容が公表されることから、その改善に一定の強制力もはたらくことが想定されます。よって、社内において人材や職場環境への積極的な投資が行われやすくなります。 また、人的資本への投資が行われることで企業価値が向上し、業績への寄与やさらなる人材への投資につながる好循環が生まれます。

取引先への安心感の提供や採用力の向上

人的資本の開示により企業イメージが向上することで、取引先へ安心感を与えて取引が円滑に進むことや、採用力の向上などのメリットがあります。例えばある企業では、研修の総受講目標時間やその実績などを開示、会社のグループ全体のエンゲージメントの数値を開示し、目標数値も定めて、乖離した数値への人事施策について言及するなど、人材育成への投資や企業と従業員の間の結びつきの強化施策を積極的にアピールすることで、採用、企業価値の向上に努めています。

5.まとめ

本稿では、人的資本の概要や注目を浴びる理由、また開示するメリットについてご紹介しました。近年注目を浴びる人的資本に関する情報の整理や開示をご検討の際は、是非本稿をご参考になさってください 。

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